軍人と出世・待遇

人民軍でもバックがあれば出世できるが、それがなくなれば地位は失墜する。

ファン教官の父は歩兵師団参謀長だった。つまり、彼はもともと権力のあるバックに支えられていた。しかし彼の入隊後、しばらくして父親が除隊した。理由はわからない。
ともかく父の除隊は彼の未来に暗い影を落とした。出世を支えてくれる守りを失い、彼ははしごを外された格好になった。彼と一緒に民警に来たライバルたちは、すべて幹部の子供たちだった。それでも教官は実力で認められようと、人並み外れて努力し、どうにかして自分が行きたい大学へ行こうとしたが、推薦があるたびに他の同僚たちに機会を奪われた。
(チュ・ソンイル『北朝鮮人民軍 生き地獄の兵営』)

人民軍の中でも「道路局」の一般兵の待遇は最悪だという。

なまじ夢を見てエリート部隊に入るより、道路工事部隊の倉庫長になった方がよいと言ったが、しかし、この部隊で一般兵になりたいとは誰も思わない。彼らの境遇は最悪だ。道路工事部隊は通常「つるはし部隊」と呼ばれる。正式名称は道路局だ。人民軍では疎外され、北朝鮮の全人民からも無視される。
道路局は「出身」「土台」が悪い家系を持ち、人民軍からも徹底的に隔離される。脱北者や韓国軍捕虜の家族、前科者、そして植民地時代に日本人の下で働いた親日派や朝鮮戦争時の治安隊(韓国軍に協力した自治組織)の家族、さらには帰還兵出身の子供たちも含まれている。彼らは訓練生時代を含めた十三年の軍での勤務の間、「つるはし」等の作業道具が唯一の武器とされる。
銃の扱い方も教えてもらえない。銃口をどちらに向けるかわからないと考えられているからだ。ただひたすら工事作業をさせられる。待遇は最悪で、食料や軍服まで自力で解決させられることさえある。その方法は略奪しかない。そのため、彼らの本職は工事だが、副業は強盗だ。彼らは入党するにも二十倍という競争を勝ち抜かねばならない。
二〇〇一年までは人民軍の待遇を受けていたが、金正日の指示で軍服を脱がされた。除隊後もまともな就職先もなく、彼らは集団で炭鉱や農村へ送られる。道路局出は、どこでも無視する。自分たちを最低の地位に追いやった北朝鮮政権に対する言葉にならない怒りをたぎらせている。(同書)