軍の食糧事情

北朝鮮軍は食糧危機のために飢え死にする兵士が出るなど、戦争遂行能力を失って久しい。いまや、栄養失調で満足に軍務に就けない軍人は40万人はに達するとされる。
事実、私が軍にいるときも1980年代末ごろから食糧の供給が滞り始め、白米はおろか、三食をとうもろこしで賄わなくていけなくなった。肉の類など、年間を通して一度もお目にかかったことはない。こうした窮乏が始まったのは1990年の初頭からである。
現在、北朝鮮軍は120万もの膨大な兵力を有している。韓国の国軍ですら70万人なのに、その2倍近い軍人をこの食糧危機下に養っているのである。
北朝鮮がそれほどの負担をしてまで120万もの軍人を維持するのは財政的、経済的に余裕があってのことではない。いつの日か、韓国に侵攻し、制服するために欠かすことのできない備えだからである。(尹 大日『「北」の公安警察』)
私たちの陣地は標高千三百メートルくらいのところにあった。非武装地帯を挟んで同じ高さのところに韓国軍の陣地もある。我々はコメなどを背負って運ぶが、韓国はヘリコプターを使う。天と地の差だ。前線なので三食コメを食べていた。後方の部隊では小麦やとうもろこしを食べているところもあるが、生活レベルは上だ。配給はなくても農場が近くにあって、そこで別途調達できるからだ。配給は一日百グラムが規定量だが、五百グラムあればいい方だ。連隊までは規定量が来ても、途中で抜き取って横流しする人がいる。労働党入党や昇級のための賄賂として使ったりもする。(朝日新聞アエラ編集部『北朝鮮からの亡命者』)
軍隊の食糧事情は、他よりいいと聞かされていたが、ふだんはトウモロコシや雑穀を主体にしたご飯と、大根や白菜、ホウレンソウなどの野菜スープを食べていた。ごちそうといえば、白米だけのご飯と豚肉で、正月と秋夕や、金親子の誕生日ぐらいしか食えなかった。パンは食ったことがない。亡命する一年ぐらい前から、軍隊でも配給がしばしばストップした。
軍キャンプの近くの民間人の畑に行って、野菜やトウモロコシを盗んだ。そうした畑を仲間内では「軍隊の補給庫」と呼んでいた。(同書)