機関車

「どこに行ったか知らないが、機関車がないんだよ。故障が多くて、機関車の数が足らないんだ。鉄道の機関区ごとに機関車を往復させているので、別の機関区では新しい機関車が車で待たなければならない」「故障車をどうして修理しないんだろうね?」「機関車のモーターの部品がないんだよ。これまではソ連から輸入していたが、ソ連が分解して輸入できなくなった」(安哲兄弟『秘密カメラが覗いた北朝鮮』)
九十三年の初め頃、咸鏡北道の北部鉄道総局を訪れたことがあった。韓国でいえば地方鉄道庁にあたる。わたしがそこを訪れたのは、清津で獲れた明太子を中国に輸出するための貨車を手配するためだった。ところが鉄道総局の責任秘書が言うには、その貨車がないという。また、貨車はなんとか都合するとしても、それを引く機関車がないという。
問い詰めると、列車を動かそうとしてもベアリングがないという。もともと、朝鮮が汽車に使うベアリングやコイルはソ連から輸入していたのだが、外貨が不足してこれらを買い入れることができないという。窮余の策として、エナメル線を巻いてコイルとして使おうとした。問題はこの北朝鮮産のコイルがしょっちゅう燃えてしまうということだ。北の機関車は底に風除けがない。したがって線路の湿気がコイルにもろにあたるのだそうである。ソ連製のコイルは湿気を防ぐことができるが、北朝鮮産はすぐにショートしてしまう。
エナメルコーティングがきちんとできていないからだ。だから北部鉄道総局は貨車一台につき二十ドル出さないとかしてくれない。(康明道『北朝鮮の最高機密』)