金日成・金正日と鉄道

北朝鮮では、すべての旅客列車の最後尾に、九号貨車と呼ばれる特別な貨物車がついている。
九号貨車は金正日のための専用の貨物車で、各地の名産品や果物や貴重な原料を平壌に運んだり、平壌から各地の党幹部らに贈り物や必要な物資を運んだりするのに使われる。
九号貨車で運ばれるものはすべて、木箱に納められ、厳重に封がされていて、警察でも中身をあらためることはできない。
身体検査を受けなければ貨車に立ち入ることも許されない。
父には鉄道で働く知り合いがいて、この安全な貨車に金属を隠し、平壌から恵山まで運ぶのに協力してもらえるという(パク・ヨンミ『生きるための選択』)
地下鉄の駅の一つ、光明駅は使われていない。電車はいつも止まらず通過していく。この駅は錦繍山記念宮殿、金日成の旧官邸の下にあり、明らかに緊急時に政府が、恐らく近くの掩蔽壕に退避するために使われる。(アンドレイ・ランコフ『民衆の北朝鮮』)
金日成は高所恐怖症で、墜落して死ぬのが怖いので飛行機には乗らない。旅行するときには必ず列車を使う。金日成は時々中国へ行く。いつ行くのかはわからないが、金日成が中国へ行くといえば、すでに二か月前から平壌・新義州間の路線沿線はたいへんである。線路周辺のあらゆるものを磨き、ペンキを塗り、掃除をして装飾するのである。
もちろん、そこには倒れそうなボロイ家や建物はない。外国人が通り際に写真でも撮るかと心配し、すべて鑑賞用に誤魔化すために建てた家や建物があるのみだ。その家や建築を掃除し、装飾する。
北朝鮮の人はそう言う強制を受けるのが嫌で、線路周辺で暮らすのを嫌う。学生までも動員して、線路と道路横の石ころを並べて五色模様で塗り、線路周辺の草は全部抜かなければならない。線路の状態を点検するため毎日のように検査車が往来し、目障りなものがあれば修理し、ペンキを塗れと支持する。
金日成が載った列車はいつ、どの時間帯に来るのやら、駅で仕事をしている者さえわからない。特別列車が入って来るに時間前から、どこから来たのか金父子を護衛する護衛局の軍隊が線路周辺に武装して並び、一般人は近づくこともできないよう通行を禁止する。鉄道で仕事をする人の中でも一号行事の参加者は別途指定され、ほかの勤務員は一応仕事をするにしても、列車が入ってくれば身を隠して見えないようにしなければならない。その次は、蟻の子一匹近づけないようにしておいて線路状態をまた点検する。
何本かある線路のうち本線だけを開通しておき、駅構内に停車中の貨物列車に移して待機させる。運行していたすべての世紀列車も中断される。転轍機には錠をかけ、他の線路に入れないようにしてしまう。
次に、電線が切れて事故が生じる恐れがあるので停電させ、すべての信号装置をもう一度検査し、鉄道員だけで仕事ができないように護衛局の人がしっかりついて、統制車だけで作業をさせる。もちろん、金日成が乗る特別列車は内燃機関である。どこの国から購入した者なのか、最高級である。(
チャン・キホン『北朝鮮 普通の人々』)