安全小組

かつて北朝鮮の秘密警察「国家安全保衛部」に所属していた尹大日によれば、北朝鮮には安全小組と呼ばれる、住民を監視するための組織がある。

人民保安省は住民の中に「安全小組」という組織を作り、その中の多くの密偵たちを通してさまざまな情報や、個人の私生活の資料までも収集している。(尹大日『北朝鮮・国家安全保衛部』)

「人民保安省」とは北朝鮮で警察を管轄する官庁であり、中央から道、市、郡、里といった末端の行政区画に至るまで組織の網が張り巡らされている。
安全小組での活動については、脱北者の尹雄が以下のように証言している。

母方の伯母夫婦が、朝鮮戦争中の一九五一年一月から四月にかけて韓国に逃げていたという事実を、父はずっとひた隠しにしていた。親戚に越南者がいれば、金日成への忠誠度は低いとみなされ、成分が悪くなるからだ。
ところが、八四年、国家保衛部が行なった住民調査でバレてしまい、それがもとで、一家は茂山(咸鏡北道)の櫻山へ追放になった。(中略)まだ成分の良かった高等中学校時代、僕は、こうした追放者たちを監視し、密告する側だった。その当時、地域ごとに安全小組という秘密組織があって、僕はその核心メンバーだった。
一校あたり十人から十五人が選抜され、住民の動向を探り、週に一回開かれる会議で報告する。主な仕事は政治犯で幹部から追放になった人物の監視だ。
二人一組で窓際に徹夜で張り込み、ラジオで韓国の放送を聞いていないかどうか見はったりした。子供は怪しまれないので、住民の監視には都合が良かったのだろう。(『北朝鮮からの亡命者』)