愛国

以下は愛国的プロパガンダについての引用。

「母親はいなくても生きられるが、親愛なる指導者の抱擁なくしては寸時も生きられない」(アレクサンドル・ジェービン『私が見た金王朝』)
「朝鮮型の社会主義こそ主体思想を体現した真の社会主義」であり「朝鮮の例は全世界を鼓舞している」
十九世紀から二十世紀にかけて、マルクス、エンゲルス、レーニンの活動は「人類の歴史の残る出来事となった」と『労働新聞』は書いている。
「これら偉大なる思想家、政治家のおかげで、社会主義はユートピアから科学的教義となり、生きた現実として具体化されるにいたったのである。しかしながら社会主義建設が進むにつれ、勝利の道に様々な理論的実際的問題が生まれた。社会主義に対して、本能的敵意と偏見を抱く者たちが社会主義を中傷し、『資本主義の優位』を説きはじめたのである。このような状況のもとで、進歩的人類は精神的苦悩をなめるにいたった――偉大な思想化、偉大なる人物を欠く現代人は、思想的敗北を喫し、思想的貧困に直面するのではあるまいか。しかしながら、朝鮮人民の偉大なる首領様、金日成主席は、偉大なる主体思想を開基し、これによって進歩的人類のこうした悩みを歓喜に変えたのである。さもなければ、マルクス、エンゲルス、レーニンの死後、思想の空白が生じ、これが人類に不幸をもたらしたであろう。実際、金日成主席を称揚し主体思想を信奉することは、進歩的な人類の大いなる幸せであり、喜びである」
「朝鮮の社会主義は人々に感激をもたらした。我が国の人員は指導者の下に固く結束し、国はあたかもひとつの『大きな家族』を思わせ、『楽園』になぞらえられる。そこには西側の先進国ではすぐに目につく貧乏人も失業者も、悪漢も、売春婦もいないからである。物質的な豊かさは一握りの手に醜く集中せず、物的生活と精神・文化的生活と労働を有機的に適合させ、みんなが平等に不自由なく暮らしている。人生の全面的発展が法によって保証されている。このような現実では、世界の進歩的人民を魅了している『朝鮮の例は、帝国主義者たちが社会主義諸国を中傷・解体せんと死に物狂い』の状況の下で『とくに価値がある』。
しかしながら生きた現実は、朝鮮が建設した人類共通の価値ある社会は、このような攻撃を断固反対するものである。資本主義に対する社会主義の優位は、朝鮮を訪れるすべての人々が確信しうる。朝鮮の例は我が国が進歩的人類の心に勝利の希望と信頼を植え付け、明るい未来を約束していることに意義がある。
この軌跡を解き明かす鍵は、我が国社会主義の比類なき優位を示す基本的要素である、主体思想を現実たらしめたことにある。だれもが個人の利益より集団の利益を尊び、労働に献身し、金日成主席を父と仰ぎ、党を母親の懐の如く信頼し、ひとつの大きな家族を構成する我が国の姿勢は、社会主義をよく知らない他国の人々をして、その魅力を用意に理解させることができる」
「朝鮮の奇跡」は次の七つに要約できる。
「まず第一に、偉大なる主席・金日成と親愛なる書記・金正日の適正な指導。第二に党の鉄の組織。第三に首領様と党と大衆の利益と目的が共通していること。第四に、すべての指導的
地位にある職員が主体思想で武装していること。第五に、全人民が思想的、政治的に教育を受けていること。第六に、全人民が義務の遂行に責任を果たしていること。そして最後に、
全人民が革命の自覚とともに国際的自覚に貫かれていること」(同書)
一九三八年から三九年を舞台にした大いに真偽の疑わしい物語をひっぱり出して、朝鮮の誇りを煽り立てた。そこでは金日成が小編成の抗日ゲリラの先頭に立ち、
「零下二○度の極寒の中、豪雪と飢餓をものともせずに幾千もの敵と戦い、我が隊の前列には赤旗がはためいていた」。この「苦難の行軍」という呼称は、その後飢饉を呼びならわす比喩的な言葉となった。「労働新聞」は国民に対し、金日成の自己犠牲を引き合いにだして、飢えに対する抵抗力を強化せよと呼びかけた。
「地球上に、朝鮮人民が『苦難の行軍』の革命精神を抱き、勝利のために前進することを阻むものは存在せず、朝鮮民主主義人民共和国は常に強国であり続けるだろう」
空腹を我慢することが愛国的義務の一部になった。平壌に掲げられた掲示板が仰々しく謳う新スローガンは「一日二食にしよう」というものだった。テレビでは、米を食べすぎたために胃袋が破裂したと言われる男性についてのドキュメンタリーが放映された。いずれにせよ食糧不足は一時的な問題である、という農業省高官の声明を引用しつつ、
新聞は次の米の収穫期には豊作が期待できると報道した。(バーバラ・デミック『密閉国家に生きる』)
飢饉の際、テレビでは絶えず『同志行進曲』という歌を流していた。「私たちは社会主義国に住み、食糧衣料の心配はない。胸を張ってプライド高く世界を見よう」それに合わせて無数の旗がうねる愛国的な場面が流される。(同書)
暗誦させられた「金正日のお言葉」にこんなものがあった。「北朝鮮では女性が男性と全く同等に社会に出て労働できるよう、幼稚園や託児所が完備されています。世界で一番幸福なのは、北朝鮮の女性です」(『北のサラムたち』)
新聞などで再三強調されることだが、革命の闘士とみなされている全住民は、「党の命令や首領の指令をまっとうせずには死ぬ権利すらない」(ジェービン、前掲書)
「民族の偉大さは領土の大きさや住民の数、あるいは歴史の古さによって決まるのではない。民族を指導する首領様の偉大さによって決まる」と「労働青年」紙は、
「わが民族は第一だ」とする原則を堅持するよう呼び掛けている。
「この原則を堅持することによって、いかなる逆境にあろうとも、どんな風が吹こうとも、首尾よく革命を遂行できる」し、「自国の人民に立鵜する愛情と尊敬を育まねば『民族的虚無主義』に陥り、結局は『ほかの勢力に隷属』しかねない」と。
北朝鮮国民のイデオロギー教育に少なからぬ役割を果たしているのは「民族の誇りと美質」の感情である。「労働青年」紙によれば、北朝鮮人民はかつての貧しい後進民族とは異なり、「偉大なる首領様・金日成元帥と親愛なる指導者・金正日同志」をいただく「幸福な民族」である。北朝鮮の勤労者は、新聞によれば、人間を中心とした「強力な独立した国民経済を持つもっとも進歩的な社会主義体制のもとに生きている。人民大衆は「国家と社会の真の主人」であり、物質的にも文化的にも「幸福で豊かに」暮らしている、と公式宣伝はつねに強調してやまない。(同書)