教科書

北朝鮮では新品の教科書は使われず、前年度以前のものを使いまわしている。

教科書は使いまわしており、古くて黄ばんでいる。名門中の名門、金成柱小学校ですら二年前の教科書を使用している。地方の普通の小学校では、二人で一冊の教科書を見たり、四~五年前の教科書をそのまま使用している。地方では教科書や弁当を持たずに登校する児童もいる。北朝鮮の教科書は国定教科書であり、全国一律に滞りなく配給されることになっているが、これは建前であり、しかも「廉価販売」であって日本のような無償配布ではない。教科書の販売期間中に購入できないと、市場に行って高いお金を出して教科書を買ってきたこともあるという。(宮塚利雄、宮塚寿美子『北朝鮮 驚愕の教科書』)

以下は北朝鮮の教科書の内容について。

教科書で標的にされているのは米国、韓国、日本で、数ページごとに「二本脚の狼・米国人たちは」という表現が出てくる。これが韓国の場合だと「傀儡軍」、日本だったら「日本の野郎」といった表現が多い。(呂錦朱『少女が見た北朝鮮』)
二○○三年の一年生用初歩読本には「わたしたちはどこへ行くの?」というタイトルの詩が掲載された。
「わたしたちはどこに来たの? わたしたちは森にいる わたしたちはどこへ行くの? わたちたちは丘を越える わたしたちは何をするの? これから日本の兵隊を殺すのだ」
音楽の授業で教わる歌の一つに『アメリカ野郎を撃て』というのがある。「ぼくらの敵はアメリカ野郎 やつらの野望はぼくたちの きれいな祖国を奪うこと ぼくが作った鉄砲でやつらを撃つぞ、バンバンバン」(バーバラ・デミック『密閉国家に生きる』)

政治的な風向きが変わると教科書の内容も変更されるが、それは子供たちが手作業で行う。

金日成の腹心だった許鳳学(ホポンハク)と金昌奉(キムチャンボン)などが離反していったのだが、人民班と学校を通し、金日成の回想記から彼の名前と彼らに関する内容を削除しろとの指示が下り、本を破いたり、その部分だけをインクで消したり、ナイフでくりぬく作業をした記憶がある。(金賢姫『いま、女として』)