学校生活と労働

北朝鮮の子供たちは勉強だけに集中することはできず、国家の経済を支えるための労働に従事させられる。

学校の課題は学習問題だけでなく、「蠅二百匹取り」「ウジ虫取り」など、その他のことの方がもっと多かった。
お手洗い、ゴミ捨て場など、汚いところをすべて縫って歩き、蠅叩きを振り回した。鞄を先生に預け、割り当て量に達するまで汚いところを探し歩く。
子供たちは互いに多く捕まえようと、蠅一匹で喧嘩をしたりした。
日が暮れだすと蠅も飛ばず、割り当て量を全部こなした子供たちは、満足して一人抜け、二人抜けていき、先生に鞄をもらって家に帰るのだが、数匹しか捕まえられなかった子供は、泣きそうな顔になって慌て始める。
時にはたくさん捕まえた子に「お前、蠅少しだけくれない。それくれたら明日おいしいお菓子あげるよ。
今日お父さんがおいしいお菓子買ってくれるんだ。少し貸してくれよ」としつこくせがむ。
また冬に蛆虫を捕まえるためには、お手洗いの後ろ側の土をくしで掘り漁ると出てくるが、これを割りばしで一匹ずつマッチ箱に入れて学校へ持っていった。北朝鮮の冬休みは一月一日から二月中旬にかけて、夏休みは八月に始まり八月末に終わる。
休みの期間中には住所別に学習班と生活班とを編成し、学習班では午前中に「普天堡マラソン」「祖国統一マラソン」などの朝の運動をし、宿題をする。午後には生活班で居住地周辺の掃除をしたり、工事現場に労力支援に行かなければならない。(金賢姫『いま、女として』)
北朝鮮の学校生活は、授業よりも組織生活と特別活動に多くの時間が割り当てられている。人民学校の二年生になると、誰でも少年団に自動加入した。
そして各種のサークルの小組活動、通行人の服装状態を取り締まる「ちびっこ糾察隊」、外貨稼ぎの事業をする「ちびっこ収買事業」、選挙に参加せよと宣伝する「選挙歌唱隊」、割り当てられた地域の掃除、緑化事業、四・一五と九・九の集団体操(マスゲーム)などに動員される。
「ちびっこ糾察隊」とは、校内で子供たちの服装を取り締まるのが主な任務だが、通行人を取り締まる権限も与えられている。
「平壌は外国人がたくさん来るところだから、服装を端正にしてください」「女性たちは夏、ズボンをはいてはいけません」という金日成の教示が学校へ下達されると、これを教示ノートに書き写して実践する「教示浸透」が始まり、通りにでて通行人たちの服装を取り締まることになる。
対象は金日成の肖像バッジをつけていない人、ズボンをはいている女性、作業服や赤衛服をだらしなく着る人、汚らしい服を着ている人などであり、職場名と名前を書き記し所属の職場に通報する。
服装の取り締まりは金日成の誕生日を目前にし、外国のお客様が多く集まる四月と五月にさらに強化される。
「ちびっ子収買事業」は各人民学校の児童へ「米帝を打ち破ろうとすれば、武器を外国から買わねばならないから、そのため外貨がいる」とし、個人別の目標を設けて、屑鉄、金、銀、古紙、空き瓶や廃品を集めるようにした。また夏休みと冬休みには、ウサギや犬の皮を収集させられた。
このような課題は都市の児童達には最も大きな悩みごとになる。
地方の児童たちは学校や家でウサギを買うことができ、それなりにウサギの皮を簡単に手に入れることができる。
「お母さん、ウサギの皮を一枚だけでいいから探してきてよ。ほかの子たち、ウサギの皮三枚、またある子は犬の皮を持ってきたよ……。犬の皮を持ってきた子は褒められて壁紙にも出たのよ。ウサギの皮一枚持って行かなかったから、私、批判されるんだってば。それに落後児童として張り紙に出てしまうのよ」
地方にいる親せきの家に行き、やっとの思いでウサギの皮を手に入れたりする。ちびっ子収買事業は普通屑鉄を基準にし、個人の割り当て量は十キログラム程度である。
もし目標額に達していない時には少年団の組織や“生活総括”を通して、忠誠心が不足だとして思想批判を受けることになる。(同書)
都市の学校以外、つまり町の学校や田舎の学校では、学校自らが燃料を調達しなければならない。当然そのツケは学生に回ってくる。
学生たちは昼間は学校で勉強をし、夕方になると学校内で組織化されている学級別に、トウモロコシの根を掘りに行く。これにも各自の割り当て量がある。
畑でトウモロコシの根を掘り出して、きれいに土をはらってから学校まで背負って運んで積んでおき、それを乾かしておいて寒い冬に教室で燃やす。登校時に学生たちは必ず煉炭をひと塊ずつ持って行かなければ、正門を通ることはできない。
毎日煉炭を持って行くのを親たちはとても嫌がるので、仕方なく学生たちは他人の煉炭を盗むようになってしまう。(チャン・キホン『北朝鮮 普通の人々』)
安州の学校では、授業そっちのけで生徒にゴミ漁りをさせている。
最近、フランスから大量のゴミが運び込まれるようになったので、生徒を引率してゴミの中からビニール袋など、まだ役に立つものを探させる。
フランスから来たゴミは、平安道の鉄道に沿った地域一帯に捨てられている。そこに高等中学校の生徒たちが隊列を組んで行く。
ゴミの中に食えるものがあれば食べるそうだが、あくまで狙いは使う捨てのビニール袋を拾い集めることだった。それを拾い集めて、綺麗に水で洗って市場に持って行くと、ビニール袋五枚と少量の食料を交換
してくれる。(辺真一『証言 餓死か暴発か』)
北朝鮮は「教育と労働」の義務を定めている。小学校で二~四週間、中学校は四~十週間、大学生は十二週間である。
放課後や夏休み中に、小学生は屑鉄拾いや古紙回収などが主であるが、食料不足が深刻になってからは学校での「ウサギの飼育」が重要な義務労働の一つになった。
「草を肉に代える」食糧増産運動である。ウサギやヤギなどの草食動物を飼育し、大きくなったら肉や乳、毛皮などをとることで、これらの動物は豚や牛などと異なって飼育しやすく、場所も取らず、なによりも飼育費がかからないという利点がある。
野山の草を取ってきてウサギ小屋で食べさせればいい。
「敬愛する金日成大元帥様は次のように教示なさいました。〈……青少年たちの中で、ウサギを育てる運動を力強く繰り広げなければなりません。
ウサギの飼育は、国の経済に役立ち、労働を愛する精神を育てる良いことです〉アカシヤの葉、萩の葉、大豆の殻、葛、大根の葉など、様々な草を上手に乾燥させ、冬などに備えます。冬は寒くならないようにオンドルを設置して穴も掘って育てます。これで母ウサギが早春から子育てできるようにします」
北朝鮮の「教育新聞」は「ウサギは穀物の飼料を与えなくても、肉と皮が取れ、皮製品をたくさん作ることができる、生産性の高い家畜です。ウサギの飼育が食生活と軽工業の発展、冬季の服の問題の解決に重要です。平壌安岳中学校と慈江道の城千中学校などの成果を伝え、各級学校ではウサギを飼育する運動を大々的に繰り広げなければなりません」そして「今こそ子ウサギの生産が本格的に進行する季節であり、母ウサギの栄養状態を改善し、防疫をうまく行い、春季のウサギの疾病をあらかじめ防がなくてはなりません」
(宮塚利雄、宮塚寿美子『北朝鮮 驚愕の教科書』)