人民班長

人民班には人民班長(inminbanjan)と呼ばれるリーダーがいる。
人民班長はどのような人で、どのように選別され、どのような役割があるのか。

地方では人民班班長は無給の仕事だ。が、人民班は石鹸などいくつかの消費財を配給する際の主要な単位になっており、班長はいつも、ふつう受け取るより多くの、しかも品質のいい品物を受け取ることができる。それでも、人民班の班長は誰もがなりたいわけではない。
彼女の領域で夜を過ごすすべての人々の動向を追跡し、書類をチェックし、警察に通報するのが彼女の任務である。アパートでは、彼女はすべての訪問者をチェックする。特別に指名された、通常六○代の女性は、すべての訪問者の書類をチェックし、その詳細を特別の台帳に書かなくてはならない。加えて、彼女は仕事を持っていない人たち、、主に退職者と主婦などの住民に「思想教育」をしなくてはならない。
豚の飼育や製鉄所の管理についての党の最近の決定について討議しなくてはならない。他国では自治体当局が行う活動を市民が請け負っている。人民班はゴミの撤去、上下水道の維持、地域の近くの道路の修理まで責任を持たされている。
人民班の中心をなすおばさんは専門的技術者ではないから、これは合理的でない。(アンドレイ・ランコフ『民衆の北朝鮮』)
一泊する客は全員、特別の台帳に登録しなければならない。
人民班班長は毎晩、名前、性別の、住民登録の場所、公民証、旅行許可証の番号、訪問の期間と目的について書いた報告を警察に提出する。こうした規則を破っていないことを確かめるために警察は抜き打ちの「家庭調査」を実施する。標準的な調査グループは警察官一人と人民班班長からなる。
その地区に軍人の家族がいる場合、そこには軍の代表も加わる。公安警察が調査に参加する場合もある。宿泊検閲の一番いい時間は午前零時過ぎだ。多くの警察官がドアか通りの近くに張りこんで、逃げられないようにする。
一方、調査グループは捜索を始める。ドアをノックし、アパートや家の中を見て回る。表面的な検査で済ませることはない。食器棚やタンスの中、ベランダなど人が隠れていそうなところはすべて捜索する。違反は客と世帯主双方の職場単位に報告されなければならない。職場単位か党細胞での次の公開の自己批判集会で全面的な告白をしなくてはならないことを意味する。状況が悪くなれば、客は労働を通じた再教育に短い期間送られるかもしれない。(同書)
一つの班は二十世帯内外の共同体(バーバラ・デミック『密閉国家に生きる』)
第三十六人民班の班長である尹女史は人民班の集会で班長候補に推挙された。推挙はあらかじめ住民の意見を徴して地域事務所の名で行われる。一般的には人民班のメンバーで働いていない者、多くは年金生活者で一日中家にいられるものが班長に選ばれ、同時に副班長も選出される。
彼女の班には約一階から六階まで、みんなで二十四世帯、約百二十人が編入されている。このうち十五世帯が事務職員、六世帯が労働者、三世帯が年金生活者の家庭。社会的階層は世帯主の職業によって決まり、世帯主は常に男性である。
班員の集会が月に一度、必要に応じて何度も開かれる。集会用の部屋はなく、だいたい班員の中で一番大きな住宅が開かれる(洞会[トンフェ])。
この場合、課長が公の資格で出席し、発言することになる。人民班は地域事務所に所属し、事務所の職員は地方権力機関――地区あるいは郡の人民委員会――の正職員として給料の支払いを受けている。
地域の党組織の書記も「解放された」党職員、つまり党地方委員会の専従職員である。地域事務所には職員の他に正式の印刷物配布係がいて、班員が受・発信するすべての郵便物を受け取って班長に回す役割を受け持っている(アレクサンドル・ジェービン『私が見た金王朝』)
人民班の犯罪防止活動は、軽微な犯罪や過失程度のものは人民班の集会で裁き、れっきとした犯罪の場合はただちに地域事務所に報告する。犯罪の中で最も多いのは窃盗である。
人民班の班長は商品を分配する役目も担っている。四半期に一度、地域事務所から支給される米の配給切符を班員に分配したり、肉や植物油の切符も配る。尹班長は「人民班の班長として月に三十ウォンの手当をもらうことになっている」と答えたが、そこで上司にあたる金ハソク氏を一瞥して「でも、国家のために受け取らないのが普通です。夫の給料と私の
年金だけで充分ですから」とつけくわえるのだった。(同書)
「節約、節約、また節約!」のスローガンは、人民班の仕事にもふくまれる。人民班の班長は、どこそこの家庭はなぜおそくまで電灯をつけているのか、なぜ水道の使用がこうも多いのかと気にせざるをえない。人民班は主婦、とりわけ若い主婦が節約を心掛けるように積極的に働きかけている。これはほとんどの食料品や工業品が割り当て供給されるこの国の状況では重要なことなのだ。このためにやりくり上手な主婦の経験を宣伝するなど、いろいろな形で若い主婦に助言が与えられている。
人民班は春の種まきや秋の収穫時には農村に人を派遣しなければならない。公式の統計資料では、田植えや稲刈りも百パーセント近く機械化が進んでいることになっているが、五月の下旬と九月から十月にかけてほとんどの住民が農村に出かける。(同書)