人糞集め

北朝鮮の人々は肥料用の人糞の提出を義務付けられている。

「人糞集め」とは農村へ肥料の支援をするために各世帯毎、乾いた人糞何キロかを集めて人民班へ提出したり、定められた日に来る収集車に出すようになっていた。
朝六時から九時に人糞車が来ると、それまで集めておいた人糞をバケツに入れて持って行き、その質と量によって赤い紙と青い紙をくれるが、この紙は後で班長達が集め、品物購買券割り当てが魅力で、割り当ての赤い紙をもらおうと、人糞車で働く人の眼の前にそのバケツをしっかり見せて「私が持ってきた人糞が一番多いよ」と喚きたてる。人糞を集めるときにはアパートの後ろの庭に穴を掘り、尿瓶に集めた家族の便を持って土と混ぜ合わさなければならない。
もっとも大変なのは一月一日と金日成の誕生日に、金日成の銅像の前で忠誠の生花を捧げることだ。もともと生花を売っている店がない上に、新年は冬で花を手に入れることは空の星をつかむようなものである。
仕方なく、温室をたずねて袖の下を使い花を求めるしかなかった。四月十五日の時には主につつじを捧げるが、時期がまだ早いので三月ごろ山に行き、つつじを積んで花瓶に入れ暖かい部屋で花をすっかり咲かせてから捧げた。つつじばかりがたくさん捧げられるので、最近ではほかの生花を捧げよとの指示が下された。
夏になると人民班単位で「蚕飼い」が盛んになる。都市では主にひまの葉や柏の葉で飼う。各世帯毎、義務的にひまの葉をいくらかずつ出すように割り当てられ競争させられる。
それでアパートの後ろの庭にはひまを植え、ひま泥棒を防ぐため警備までつける。あるがめつい主婦は、この競争でいい評価を得ようと何人か組んで、テントを持って山奥に行き、柏の葉で蚕飼いをしようとしたりした。(金賢姫『いま、女として』)