配給特権

党幹部がもつ特権のなかでも重要なのは、食料配給だ。
幹部は庶民とは別の配給所で食料を受け取る。配給される食糧の内容は階級に応じてランク分けがされている。

一般庶民は食糧不足で苦しんでいるようだが、幹部には一級から四級まで特別の食料供給所がある。一級は政治局員以上の高官のためのもので、毎日おかずまで供給する。
二級は長官、党中央委員候補、次官クラスまでで相当のものが手に入る。私は三級で、十分な食べ物が手に入った。(朝日新聞アエラ編集部『北朝鮮からの亡命者』)
北朝鮮の食糧配給は、一般的にはあまり知られていないが、二本立てになっており、一般向けの「配給制」以外に、幹部向けの「供給制」という制度がある。供給制はさらに一号から九号まで細かくランク分けされ、一、二号は金親子、三号は呉振宇(人民武力相)など最高幹部クラス。我が家は四号だった。たとえば米は、配給制だと一家に一日六百グラムなのに、供給制なら、八、九百グラム支給された。塩も精製された上質のものがきたし、味噌は配給制では粗悪なトウモロコシ製だが、供給制なら大豆製。油も、配給制はトウモロコシ製だが、供給制はごま油だった。さらに供給制にだけ、肉や魚、卵、野菜が追加された。父からこんな風に言い聞かせられて育つ。「学校には一般家庭の子供も来るのだから、お前は特に正直で控えめな態度をとり、他の模範となるように」昼ごはんの弁当は、他の子はトウモロコシご飯とジャガイモだけなのに、私は白い飯。そして一番上にキムチを敷き詰めて隠しているが、めくると肉や卵が並んでいる。だから弁当箱は決して人より先には開けないようにしていた。(同書)
地方ごとに幹部専用供給所というのがある。階級によって高級な物資の取得権があるのだが、幹部専用供給所で生活に必要な食料品やその他の品物を国定価格で買うことができる。
一号、二号、三号……九号、十号と対象者に階級がつけられる。例えば二号の階級の供給対象者には、毎月、食用油二リットル、たばこ三十箱、焼酎二本、ビール十本と食料品、洋服の生地、靴、テレビ、冷蔵庫などが配給される。二号の供給対象の職位と言えば、党の中央委員会副部長、政務院副部長(次官)、特急企業所の支配人、道の行政、経済の指導委員会委員長、また安全局長である。(チャン・キホン『北朝鮮 普通の人々』宮塚利雄訳)

庶民は食糧が手に入れられず苦しんでいるが、党幹部には食料の不足はなく、しかも格安で手に入れることができる。

労働党幹部の義父の力で、私たちは食材を求めるにも全く苦労しなかった。一週間単位で必要なおかずを選んで申し込むと、その通りに配達された。もちろんお金を払っていたが、市場やほかの商店に比べると値段は格安で、品質も優れたものばかりだった。主食の米は基本として支給され、副食としては卵、魚、ニンニク、肉などが週別に品目が変わって届けられた。
肉は家族の人数によって重量が一定に決められていた。一般人は水産物をせいぜい一年に一、二回見ればいいほうだったが、婚家ではしばしば食卓にのぼった。(『私は金正日の「踊り子」だった』)
庶民の生活は苦しいが、食料不足にはもう慣れっこになっている。今でも幹部クラスは不足がない。この層の供給を減らせば問題が起きるからだ。毎月決められた日に何でも買えるし、外貨が手に入るので外貨ショップでも購入できる。それに労働党中央とか社会安全部などの権力機構では、独自の農場まで持っている。(『北朝鮮からの亡命者』)

配給だけでなく『幹部商店』なるものまである。

一般人民大衆が出入り禁止されている各級『幹部商店』は平壌では党政治局員、政府の部長(相)、道市党・人民委員長クラスの幹部たちが、各道市では同党・人民委員長クラスの幹部たちだけが出入りし、あの使い物にならないウォンが使え、しかも廉価で米、肉類、魚類、野菜、高級調味料などの生活必需品を豊富に取り揃えている。(金元祚『凍土の共和国』)

幹部たちは、余った食料を市場に横流ししている。

党幹部の家では犬にまで白い飯をやっている。党幹部たちは、割り当てられた分以上をもらって、使い残したものは、市場へ持ちだし、高い値で売っていた。市場で不法に出回っているもののほとんどが、党幹部から出たものだ。(趙英鎬『にんじんどろぼう』洪英義訳)