金日成バッジとは何か

北朝鮮では、指導者の顔が描かれた「金日成バッジ」を左胸(心臓部)に着用することが義務付けられている。
では、金日成バッジとはどのようなものなのか。

北朝鮮における金日成バッジは、中国における毛沢東バッジとは、決定的に違っている。北朝鮮では国民のすべてが、好むと好まざるとにかかわらず、強制的に決められたバッジを付けなければならない(金正日総書記はつけたりつけなかったりしているようだが)。中国の知人に聞いたところによると、文化大革命時代にはみんなが自分の持っている毛沢東バッジと友人の持っているほかのバッジとを交換したりしたというが、北朝鮮では絶対にありえないことだ。なぜなら、金日成バッジは、金日成の偶像化を象徴するだけでなく、北朝鮮の階級差別の象徴でもあるからだ。北朝鮮の国民は、金日成バッジを個人で勝手につけ外しできない。しかも、付けたくてもつけられない階級があるのだ。それがいわゆる「敵対階層」なのか、それとも犯罪を起こした人たちなのか、私は案内員にしつこく聞いてみたが、案内員はその都度、答えをはぐらかした。(宮塚利雄『北朝鮮ツアー報告』)

金日成バッジはどのような経緯で作られたのか。

とにかく、金日成バッジの伝統は特異である。それは「偉大な首領」に対する崇拝が頂点に達した一九七〇年代に導入された。一九七二年、北朝鮮は金日成の生誕六〇周年を祝う壮大な祝賀を開いていた。その当時、最高幹部の一人が、うまいアイデアを思いついた。金の肖像を描いたバッジの導入を提案し、誰に対しても着用を義務付けた。(アンドレイ・ランコフ『民衆の北朝鮮』鳥居英晴)

バッジには種類があり、着用している人の身分階級を表している。

バッジには多くの形があり、約二十のタイプがある。それぞれの形のバッジはそれを着けている人について多くを語る。最も貴重で珍しいタイプは、大きな赤い旗を背景に金日成と金正日が描かれている。これは「親愛なる指導者」と「偉大な首領」の両者の像が描かれた唯一のバッジで極めて珍しい。こうしたバッジは最高位の党官僚に与えられるもので、こうしたバッジを付けている人を見かけると、下っ端の北朝鮮の官僚は呆然としてしまう。金正日を描いた(一人だけで父親はいない)別のタイプのバッジは、治安当局の幹部が着けている。この二つは極めて稀で、これらを除いて他のすべてのバッジは金日成だけが描かれている。
軍人、社会主義青年同盟など向けには、別のタイプのバッジがある。例えば、下級の党幹部はいわゆる「大きな丸いバッジ」を着けている。一方、北朝鮮の一般人は「小さな丸いバッジ」だけを着けている。(同書)
党旗像バッジ=労働党旗の中に金日成の顔が描かれ、付けられるのは党中央の指導員クラス以上の高位職(政府要人)クラスに限られる。軍服姿の金日成が描かれた軍像バッジは国家保衛部や社会安全部など、司法・検察機関の要員だけがつけられるものだ。
円形大型バッジ=円の中に金日成が描かれた円形大型バッジは、地方の党幹部クラス以上が付ける。一般の住民は、この半分くらいの大きさの円形小型バッジを付けるのが普通だ。
実際にはそれだけでなく「金日成総合大学」や「三大革命小組」(思想・技術・文化の三大革命)などという機関名が付いたバッジもある。(宮塚、前掲書)