バッジを着け忘れるとどうなるか

学生は朝、校門に入る前でバッジを着けているかどうかのチェックを受けるという。

[大学生は]朝は幼稚園の園児たちのように列をなして歌を歌いながら登校する。大学の正門では、腕章を付けた学生代表が登校してくる隊列を検査する。何を検査するのかと言うと、ズボンの線がきれいに入っているか、頭はきちんと刈っているか、金日成のバッジをつけているか、などである。ここで指摘を受けると構内に入れず、家に帰らなければならない。(チャン・キホン『北朝鮮 普通の人々』宮塚利雄訳)

通行人への抜き打ち検査もあるようだ。

あたふたと着替えをし、バッジを忘れて外に飛び出すと、社会秩序維持隊の一員であることを示す腕章を巻いた一〇代の少年に止められた。彼らは国民がきちんと自分のバッジを着用しているか抜き打ち検査をする社会主義青年同盟の自警員だった。初犯者は特別な思想講義を受講しなければならず、個人記録に罰点がつく。ただその時、バッジを家に忘れてきたことに気付いたソン夫人が心底取り乱したので、少年は警告だけで放免してくれた。(バーバラ・デミック『密閉国家に生きる』園部哲)

「個人記録に罰点がつく」とどうなるのかは判然としないが、おそらく今後の進学や就職で不利な待遇を受けるのだろう。警告だけで放免してくれることから、さほど重い罪でないようだ。
バッジを着け忘れても小言を言われる程度で済むのは以下の脱北者の証言からもわかる。

母は市の中心部の通りで赤い腕章をした自警団の五人に呼び止められた。[…]意地が悪いのは彼らがよく朝の通勤ラッシュ時を狙うということだ。急いで家を出るときに偉大な首領のピンバッジをつけ忘れるという人が少なくない。これは小さい円形のバッジで、北朝鮮ではすべての大人が心臓のあたりにつけることになっている。自警団はこういう些細な問題のある人を見つけては呼び止めるのだ。困るのは、呼び止められた方は「うっかり忘れました」とは言い難い。偉大な首領を忘れるとは何事だ、と言われかねない。(イ・ヒョンソ、デイヴィッド・ジョン『七つの名前を持つ少女』夏目大)
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